彼の遺書にはわたしの名前は一度たりとも出てこなかった。それは彼にとってのわたしという存在の軽さのあらわれであって、恋人という存在の軽さのそれだと錯覚してはいけないと思った。 名前を書かれた彼の両親や兄弟、友人たちの言う「君のことを考えていな…
世界の終わりの始まりを、僕は確かにその日見た。 朝4時50分、展望台から見える景色は真っ暗だった。宝石箱と呼ばれるような有名な観光地とは違う、お金のかけられなかったクリスマスツリーの電飾みたいな、そんな夜景を僕らは見ていた。 冬は朝が来るのが本…
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